公開 2026年8月26日
「長期宇宙滞在により引き起こされる耳石前庭機能障害の評価(Labyrinth)」の研究チーム(研究代表者:岐阜大学大学院医学系研究科 森田啓之名誉教授)は、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在した宇宙飛行士と、宇宙でのマウス飼育ミッション(Mouse Epigenetics/ MHU-1)のマウスを対象に解析を行いました。その結果、耳の卵形嚢、球形嚢の2つの平衡感覚器官※1 のうち「球形嚢」が宇宙環境で選択的に変化することを世界で初めて明らかにしました。
また、宇宙飛行士では帰還直後に球形嚢の機能低下と姿勢バランスの低下が認められ、その一部は微弱な前庭電気刺激(noisy GVS)※2 によって改善することも示されました。
さらに、宇宙で飼育したマウスの耳の組織を用いた分子レベルの解析でも、球形嚢で大きな変化が認められました。
これらの成果は、宇宙環境に対する前庭器官の適応メカニズムを明らかにした初めての成果です。本成果は、将来の月・火星探査に向けた宇宙飛行士の健康管理やリハビリテーション技術の開発だけでなく、地上の高齢者の転倒予防や前庭疾患の新たな治療法の開発にもつながることが期待されます。
本研究の成果は、科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」に2026年8月17日に掲載されました(論文情報)。
- ※1 耳の奥にあり重力や体の動きを司る前庭器官は、主に上下方向の重力や加速度を感じる「重力センサー」である球形嚢(きゅうけいのう)と、主に水平方向の加速度や頭の傾きを感じる卵形嚢(らんけいのう)の2つで構成されています。
- ※2 noisy GVS(ノイジー前庭電気刺激)は、耳の後ろから非常に弱い電気刺激を与え、前庭機能を補助する技術です。
大学プレスリリース
- 宇宙で変わる「バランス感覚」の正体を解明 ― 耳の重力センサー「球形嚢」が適応の鍵だった ― (2026年8月25日)
- 宇宙で変わる「バランス感覚」の正体を解明 ― 耳の重力センサー「球形嚢」が適応の鍵だった ― (2026年8月25日)
きぼう利用テーマ
- 平成27年度「きぼう」利用フィジビリティスタディテーマ:長期宇宙滞在により引き起こされる耳石前庭機能障害の評価(Labyrinth)
研究代表者 森田 啓之(岐阜大学 名誉教授) - 平成24年度「きぼう」利用テーマ重点課題:マウスを用いた宇宙環境応答の網羅的評価(Mouse Epigenetics/ MHU-1)
研究代表者 高橋 智(筑波大学 教授)
論文情報
雑誌名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)
論文名
著者名
ABE Chikara, FUJITA Shin-ichiro, SHIBA Dai, TANAKA Kunihiko, FUJIMOTO Chisato, TOKUNAGA Shigeto, IWASAKI Shinichi, TAKAHASHI Satoru, MURATANI Masafumi, MORITA Hironobu
DOI
10.1073/pnas.2605593123
関連リンク
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
有人宇宙技術部門 宇宙環境利用推進センター
きぼう利用プロモーション室
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