「きぼう」を使って再生医療につながるiPS細胞を用いた立体培養に関する実験を行いました!

公開 2020年12月25日
ドラゴン補給船運用21号機(SpX-21)によってISSに運ばれた試料を用いて、野口宇宙飛行士により12月8日から、「微小重力環境を活用した立体臓器創出技術の開発(Space Organogenesis)」に関する実験が地上と連携して行われました。
この実験ではヒト由来のiPS細胞から作製した肝臓の基(器官原基)となる肝芽を宇宙に打上げ、宇宙実験を実施しました。iPS細胞由来の細胞塊を用いて、立体臓器への大血管付与を目指した宇宙実験は世界初です。

宇宙空間における微小重力では沈降や対流などが無く静かな環境のため、三次元的に組織や臓器を再構成させることにおいて有利だと考えられます。本研究では、微小重力環境を活用することで、iPS細胞を用いたヒト器官原基創出法を発展させ、大血管を付与した立体臓器の創出を目指した基盤技術開発を行うことを目的とします。

地上において、ヒト由来のiPS細胞から分化させた肝前駆細胞、血管内皮細胞、間葉系細胞から肝臓の基となる肝芽を作製し、血管様構造体と共に封じ込めた培養容器を「きぼう」に打ち上げました。 宇宙では野口飛行士が宇宙用に開発した装置を用い、培養容器を回転させることで、細胞塊を血管様構造体の周囲に積極的に集合させ、「きぼう」内に設置されたインキュベータ内で肝芽を培養しました。

今後、試料を地上に回収し、その成長の違いなどを地上で培養した対照群と比較し、器官原基の成長における重力の影響について解析を行います。解析により、将来、地上で大血管を付与したヒト臓器を作るための必要条件や、新たな3次元培養装置の開発のヒントが得られることを期待しています。

Space Organogenesis実験作業中に肝芽の入った容器を持つ野口宇宙飛行士(出典:JAXA)
筑波宇宙センターのユーザ運用エリアでSpace Organogenesis実験を見守る関係者(谷口PI(研究代表者)、田所CI(研究分担者)など)(出典:JAXA)
筑波宇宙センターのユーザ運用エリアで野口飛行士の作業を見守る関係者(出典:JAXA)
研究代表者コメント
谷口 英樹 教授
東京大学/横浜市立大学

臓器移植は臓器不全症に対する唯一の根治的治療法ですが、移植ドナーの不足が世界的に問題となっています。我々は、ヒトiPS細胞を用いた臓器移植の代替手法の開発に取り組んでいます。ヒト臓器の発生は、子宮内羊水中において浮力により重力がキャンセルされた環境において生じます。宇宙空間では、子宮内に類似した環境を精緻に再現することが可能です。本プロジェクトは、ヒト臓器の芽(器官原基)の大型化や成熟化にとり必須の要素である大血管との相互作用について、微小重力環境を活用して新たな技術の開発を試みるものです。宇宙実験から、ヒト臓器創出に向けた革新的な3次元培養技術が生み出されることを期待しています。

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