MAXIがオーロラの直下におけるマイクロオゾンホール形成の発見に貢献!

公開 2022年10月12日

地球近傍の宇宙空間を飛び交う放射線帯電子は、宇宙から磁力線に沿って地球大気へ降下し、中間層におけるオゾン量の変動の要因になることが指摘されていましたが、放射線帯電子が "いつ"、"どこで" 大気変動に影響を与えているかを特定することは困難でした。金沢大学、名古屋大学、国立極地研究所、宇宙航空研究開発機構などの国際共同研究グループは、「孤立陽子オーロラ」が1Hz以下の電磁波により発光することに注目し、その直下におけるオゾン変動を調べることで、これまでわからなかった放射線帯電子の大気降下によるオゾン変動を定量的に調べることができると考えました。

放射線帯電子によるオゾン変動の手がかりは、放射線帯電子に加えて、電磁波とオーロラにあります。電磁波を計測することで大気降下が "いつ" 始まったか、オーロラを計測することで "どこで" 発生したかを知ることができ、そしてその直下でのオゾン変動と直上での放射線帯電子を同時に観測することで、大気が "どのような" 影響を "どのようにして" 受けたかを知ることができます。このような複数の情報を統合的に調べるためにプラズマ物理、オーロラ科学、微量大気組成センシング、電磁波工学に関わる広い研究分野の研究者が集い、国際協力による観測を行ったところ、複数衛星と地上観測により、世界で初めて1 Hz以下の電磁波に伴う陽子オーロラ直下でのオゾン変動を詳細に捉えることに成功しました。国際宇宙ステーション(ISS)に搭載された全天X線監視装置(MAXI)の放射線モニタ(RBM)は、孤立陽子オーロラ直上における放射線帯電子の増加を検出し、研究に貢献しました。

MAXIは本来宇宙物理学分野の観測ミッションで、いつどこで突発的な活動が起きるかわからない遠方の天体の突発的な活動を捉えることを目的として現在も運用を続けています。本研究で用いたRBMはMAXIの主検出器を突発的な放射線増加から保護するために搭載されていますが、その荷電粒子観測性能が地球物理学分野の研究に有用だとわかりました。MAXIの観測データを両分野で活かすためには使いやすさと即時性が重要です。JAXAおよび理化学研究所は相互に協力してMAXIデータの地上処理に取り組み、他分野での利用もしやすいデータの迅速な公開を継続しています。

論文情報

雑誌名
Scientific Reports
論文名
著者名
尾崎光紀、塩川和夫、片岡龍峰、Martin Mlynczak、Larry Paxton、Martin Connors、八木谷聡、橋本至音、大塚雄一、中平聡志、Ian Mann
DOI
10.1038/s41598-022-20548-2

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