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JAXAでは、PADLES線量計を用いた、多くの国際協力を実施しています。

Dosimetric PADLESは、PADLES線量計測システムを用いた、「宇宙放射線計測分野における国際協力実験」です。

地上の加速器を使用して行われた、ISSに搭載予定の各国の宇宙放射線測定器を校正・相互比較する照射実験(ICCHIBAN project)では、PADLES線量計の測定精度が高いことが評価されました。

また、宇宙飛行士の船外活動時における被ばく線量を評価するために、人体ファントム*1を国際宇宙ステーションの船外曝露部や船内に搭載するマトリョーシカ(MATROSHKA)プロジェクトや、組織等価物質*2を使い、遮へい材の線量寄与を検討するアルトクリス(ALTCRISS)プロジェクトにも参加し、宇宙放射線計測に関する多くの搭載実験実績を持っています。

*1 人体ファントム
人体の手足以外の部分を模擬した人形のこと。放射線に対して人体と等価な材料でできており、人体が放射線を受けた時と同じ体内環境を再現する。
*2 組織等価物質
人体の各組織や臓器を、放射線に対して等価な材料で作ったもの。

1. ESA/DLR マトリョーシカ(MATROSHKA)人体ファントム プロジェクト

MATROSHKAパッチロゴ

ドイツ航空宇宙センター(DLR)が中心となって実施している国際協力実験です。

宇宙飛行士の船内/船外活動中の被ばく線量を測定するために、人骨・模擬臓器を持つマトリョーシカ人体ファントムをISS船外曝露環境およびISS船内に設置し、2004年2月から実験が開始されました。


JAXAのPADLES線量計は、MATROSHKAファントムの頭部に装着されました。


各国の放射線検出器を入れたマトリョーシカ人体ファントムは、ポンチョを装着し(左)、シールドコンテナに収納され(中央)、多層断熱材でできたアウター(右)で覆いました。


マトリョーシカ人体ファントムをISSロシアサービスモジュール(ズヴェズダ)の外壁に取り付けて、約1年間の宇宙放射線被ばく線量を計測しました。(下図)

ロシアサービスモジュールに取り付けられたマトリョーシカファントム
ロシアサービスモジュールに取り付けられたマトリョーシカファントム

2010年から、JAXA/ESA(欧州宇宙機関)/ROSCOSMOS(ロシアの宇宙機関)の3機関が合同で、マトリョーシカ実験2を日本の実験モジュール「きぼう」船内で実施しました。

 PADLES線量計は、ロシアのプログレス補給船(37P、平成22年4月29日打上げ)で打ち上げられました。その後、ロシアの宇宙飛行士がマトリョーシカ人体ファントム体内に25個のPADLES線量計を組み込み、野口宇宙飛行士によりISS「きぼう」船内に設置されました。約11ヶ月間の計測をし、ロシアのソユーズ宇宙船(24S、平成23年3月16日帰還)で地上に帰還しました。

線量計を組み込んだファントムと野口宇宙飛行士(右)(提供:NASA)

2010年5月、線量計を組み込んだファントムと野口宇宙飛行士(右)(提供:NASA)

2010年5月、線量計を組み込んだファントムと野口宇宙飛行士の作業の様子、「きぼう」船内カメラからの画像(提供:NASA)
2011年3月10日、「きぼう」モジュールからファントムを取り外してロシアモジュールに運ぶPaolo Nespoli宇宙飛行士の様子(提供:NASA)
2011年3月10日、「きぼう」モジュールからファントムを取り外してロシアモジュールに運ぶPaolo Nespoli宇宙飛行士の様子、 「きぼう」船内カメラからの画像(提供:NASA)
リンク先:マトリョーシカプロジェクト
ESA/DLR 紹介ページ
http://www.dlr.de/me/en/desktopdefault.aspx/tabid-2015/2935_read-4505/
JAXAマトリョーシカ シリーズ1実験プレスリリース
http://www.jaxa.jp/press/2004/01/20040128_protein_j.html#section-5
「きぼう」船内実験室で開始した国際共同宇宙放射線計測実験の紹介ページを開設しました
http://iss.jaxa.jp/kiboexp/news/matryoshka20100522.html
 
船内実験室 国際共同宇宙放射線計測「マトリョーシカ」実験を開始しました。
http://iss.jaxa.jp/kibo/kibomefc/srpds/matryoshka.html
「きぼう」日本実験棟内で国際共同宇宙放射線計測実験が終了しました。
http://iss.jaxa.jp/kiboexp/news/matryoshka20110322.html

2. ROSCOSMOS マトリョーシカ-R球体ファントム プロジェクト


2012年5月21日から、宇宙放射線の物理計測「マトリョーシカ-R球体ファントム実験」を「きぼう」日本実験棟船内実験室で開始しました。この実験は、人体の深部線量被ばくを計測し、宇宙飛行士に対する宇宙放射線被ばくのリスク評価を行うための実験です。2012年から2016年の間に3回の実験を実施する予定です。

実験名 設置場所 PADLES搭載期間
マトリョーシカ-R
球体ファントム実験
「きぼう」船内実験室のF2ラック 2012年5月~9月
(125日間)
マトリョーシカ-R#2
球体ファントム実験
「きぼう」船内実験室のエアロック付近 2013年9月~2014年3月
(170日間)
マトリョーシカ-R#3
球体ファントム実験
「きぼう」船内実験室のエアロック付近 2015年3月~2016年3月
(340日間)
「きぼう」船内実験室での国際共同宇宙放射線計測「マトリョーシカ-R」実験を実施しました。
http://iss.jaxa.jp/kiboexp/news/120525_padles.html

マトリョーシカ-R球体ファントム実験

第1回目は2012年5 月15日から9月17日(125日間)に実施しました。ズヴェズダ内に保管されていた球体ファントムを、ロシアのOleg Kononenko宇宙飛行士が取り出し、「きぼう」船内実験室のF2ラックに設置しました。

「きぼう船内実験室に搭載した球体ファントム」 球体ファントム外観
(左)球体ファントム外観
(右)「きぼう」船内実験室に搭載した
   球体ファントム
マトリョーシカ-R球体の設置場所(F2ラック)
マトリョーシカ-R球体の設置場所(F2ラック)
「きぼう」船内実験室での国際共同宇宙放射線計測「マトリョーシカ-R」実験を実施しました。
http://iss.jaxa.jp/kiboexp/news/120525_padles.html

マトリョーシカ-R#2球体ファントム実験

第2回目は2013年9 月26日から 2014年3月14日(170日間)に実施されました。

きぼう船内実験室に搭載した球体ファントム マトリョーシカ-R球体の設置場所(エアロック付近)
「きぼう」船内実験室に搭載した球体ファントム マトリョーシカ-R球体の設置場所(エアロック付近)

マトリョーシカ-R#3球体ファントム実験

第3回目は、2015年3月28日~2016年3月2日(340日間)に実施されました。

きぼう船内実験室に搭載した球体ファントム マトリョーシカ-R球体の設置場所(エアロック)付近
「きぼう」船内実験室に搭載した球体ファントム マトリョーシカ-R球体の設置場所(エアロック)付近

3. アルトクリス(ALTCRISS)遮蔽材料プロジェクト

イタリア核物理研究所(INFN)が中心となって実施した国際協力実験です。ISSクルーキャビンの遮へい材料・厚さの遮へい効果を調べるために、遮へいブロックに線量計を取付けた実験です。

2005年10月から4回のシリーズ搭載実験を実施し、現在各機関で解析が行われています。

ロシアサービスモジュール内に取り付けられた線量計
ロシアサービスモジュール内に取り付けられた線量計(矢印)

4. ブラドス(BRADOS)/Space-ICCHIBANプロジェクト

ロシア生物医学問題研究所(IMBP)と放射線医学総合研究所(NIRS)が主体となり、ISSパートナーが参加する国際協力実験です。同時期・同位置での宇宙放射線線量計の性能比較・深部線量効果実験を実施しています。

2007年5月から3回シリーズの搭載実験を実施し、現在各機関で解析が行われています。

SI-phase2 実験で搭載したJAXA線量計の構成各国の線量計は、同一条件の放射線場となるように、アルミ製のコンテナケースに収容され、ロシア・サービス・モジュール内に設置される。
(左)SI-phase2 実験で搭載したJAXA線量計の構成。各国同じ条件となるように、ポリカーボネートケースが配布されている。
(右)各国の線量計は、同一条件の放射線場となるように、アルミ製のコンテナケースに収容され、ロシア・サービス・モジュール内に設置される。