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タンパク質は私たちが生きていく上で必要不可欠なものです。
タンパク質とはどのようなもので、どのように働いているのか、簡単にご紹介しましょう。
皆さんはタンパク質と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
肉や魚?あるいは爪や髪、皮膚などもタンパク質でできていることを知っている人もいるかもしれません。タンパク質は炭水化物・脂質とともに三大栄養素と呼ばれ、私たちが生きていく上で必要不可欠なものです。
それではなぜ、私たちはタンパク質を摂取しなければ生きていけないのでしょうか。たとえば、皮膚を作る「コラーゲン」や、血液中で酸素を運ぶ「ヘモグロビン」などもタンパク質の一種ですが、タンパク質の働きはそれだけに留まらず、運動、光・味・においなどの感知とその情報の伝達、病原体などから身体を守る免疫システム、遺伝情報を司るDNAの合成など、あらゆる生命の営みを司っています。
またインフルエンザやエボラ出血熱、デング熱、エイズなど、感染症の原因となるウイルスはタンパク質でできた殻を持っていますし、夏の風物詩であるホタルの発光や光エネルギーを利用して糖や酸素を作り出す植物の光合成もタンパク質の働きによるものです。
このように生命活動の主役とも言えるタンパク質は、ヒトの体内だけで10万種以上、自然界全体では実に約100億種も存在するとされており、それぞれが決まった固有の働き(機能)を持って生命活動を支えています。
タンパク質は主に水素・炭素・窒素・酸素から構成されるアミノ酸が鎖状に多数連結してできた分子で、その数と並び方を決める設計図は遺伝子であるDNAに書き込まれています。タンパク質に含まれるアミノ酸はその性質の違いから20種類程度に分類され、構成するアミノ酸の数や種類、結合の順序によって、すべてのタンパク質が作り分けられています。
遺伝子から読み取られた設計図をもとに、タンパク質は、様々な工程を経て、最終的にリボソームというタンパク質合成工場で合成され、特定の形に折りたたまれていきます。この折りたたまれた状態になって初めて、機能を発揮することができます。タンパク質の合成は常にフル稼働しているわけではなく、必要なときに必要なだけ、必要な場所にそれぞれのタンパク質が供給されるように、合成スピードを調整しています。
一方で、このバランスが崩れたり、正常な機能を発揮できないようなタンパク質が作られた場合に、身体の不調となって症状が現れるわけです。
遺伝情報を司るDNA(デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid))は、基本的にA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類しかありません。この4種が連続的に結合して鎖状の分子を構成し、その配列自身が遺伝情報となって保存されています。DNAの鎖を形成する基本骨格は同じですが、塩基と呼ばれる部分の構造の違いによって区別されています。DNA鎖は二本一組となって二重らせん構造を取っていますが、AはTとGはCとのみ結合することができるようになっているため、二本のDNA鎖は同じ情報を持っていると言えます(そのため、片側一本に対してもう一本のことを「相補鎖」と呼びます)(図2)。
DNAの配列のことを一般に「塩基配列」と呼び、塩基3つ分で1つのアミノ酸に対応しています。例えば、ATGはメチオニンというアミノ酸、GAAはグルタミン酸です。この関係は遺伝暗号、遺伝コードなどと呼ばれ、これらアミノ酸に対応する3つの塩基配列のことを「コドン」と呼びます(図1)。塩基がATGCの4種類で、コドンは3塩基から成っていますから、4x4x4=64種類の組み合わせがあります。アミノ酸は20種類ですが、通常、複数のコドンが同じアミノ酸に対応しています。
タンパク質の合成は、まず遺伝子のコピーを作るところから始まります。遺伝子上に存在するタンパク質の設計図は、RNA(リボ核酸(ribonucleic acid))という分子にコピーされます(この反応を転写と言います)。RNAはA、U(ウラシル)、G、Cの4種があり、UはDNAのTに相当します。遺伝子の設計図を転写されたRNAは、遺伝子の伝令役(実際にメッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれています)となって、タンパク質合成工場であるリボソームに運ばれます。
リボソームはタンパク質とリボソームRNA(rRNA)と呼ばれるRNAが一体となった超巨大分子です。また細胞内にはトランスファーRNA(tRNA)と呼ばれる別種のRNAも存在しています。tRNAにはアミノ酸が結合しており、結合したアミノ酸に対応するコドンと相補的な配列(アンチコドン)を持っています。例えば、セリンというアミノ酸に対応するコドンの一つは「UCA」ですが、「AGT」というアンチコドンを持ったtRNAにはセリンが結合しています。RNAは、AはU(DNAのTに相当)とGはCと結合できますから、「UCA」というコドンと「AGT」というアンチコドンは相補的ということです。
リボソームはmRNAをスキャンして、対応するtRNAを呼び込み、そこに結合したアミノ酸を連結していくことで、タンパク質を作っていきます(図2)。
タンパク質の鎖を構成するアミノ酸の主要な部分(主鎖構造)はすべてのアミノ酸で共通で、側鎖と呼ばれる部分の構造だけがバリエーションを持っています(図3)。
この側鎖の構造は、化学的性質の違いによって親水性のもの(水に溶けやすい)と疎水性のもの(水に溶けにくい)に分けられ、さらに親水性のものは、プラスの電荷を持つものとマイナスの電荷を持つもの、そのどちらでもないものとに分類されます。側鎖の大きさも様々で、これらの結合する順序や長さの組み合わせによって、働きの異なるすべてのタンパク質を作り上げています。