Flow

宇宙実験の流れ

02

いざ、国際宇宙ステーションへ!

いざ、国際宇宙ステーションへ!

宇宙実験の流れを見てみましょう。
将来、みなさんが宇宙でタンパク質の結晶生成実験を行うとしたら、
いったいどんな準備が必要なのでしょうか?

Step01.

選抜

どんな準備が必要?

JAXAでは、1年に2回、日本の大学や研究機関からタンパク質を募集し、その中から素晴らしい成果が期待できる研究テーマを選びます。
テーマ選抜にあたっては、様々な分野の専門家にお集まりいただいて議論します。

外部評価委員会

外部評価委員会

Step02.

準備1条件検討

なにごとも準備が肝心

宇宙できれいな結晶を作るためには、打ち上げ前の準備が欠かせません。でも心配はいりません、JAXAがちゃんとお手伝いします。これまでの約10年の経験から、ただ試料を宇宙に打ち上げればいいわけではなく、試料の状態や結晶化の挙動をきちんと調べておくことで、成功の確率が上がることがわかってきました。

一言でタンパク質といっても、人間の体内だけでも10万種類もあります。きれいな結晶を得るためには、まず、タンパク質試料に余計な不純物が混ざっていないか、タンパク質が凝集してしまっていないかなどを確認し、問題があれば試料の状態を改善します。

次に、タンパク質を溶かす溶液の種類、濃度、pH値や、分子と分子の接着剤の役割をする添加物の種類を、それぞれのタンパク質の特徴に合わせて決めなければなりません。さらに、宇宙実験用にJAXAが開発した結晶化容器「JCB-SGT」で実際に結晶化を行い、結晶化条件の微修正を行います。

一言コメント

溶液の種類だけでも数千種!その濃度やpH値まで考えたら、組合わせは無限大。大変な作業です。JAXAは、実験を提案された先生方と一緒に、こうした検討を行います。(実際の支援範囲は、実験テーマによって異なります)

JAXAの実験室

JAXAの実験室

JAXA実験室のご案内

Step03.

準備2射場作業

打ち上げ予定日が迫ってきました

現在、打ち上げ手段としては、ロシアのソユーズ宇宙船、プログレス補給船、そしてアメリカSpaceX社のドラゴン補給船などを用いることが可能です。ロシアの宇宙船はカザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地から打ち上げますので、バイコヌールにて打ち上げ前の最終準備、つまりタンパク質と結晶化に必要な溶液を容器に詰め込む作業を行います。アメリカの宇宙船の場合は、フロリダ州のNASAケネディ宇宙センターあるいは筑波宇宙センターにて最終準備を行います。

打ち上げの際は、多少の温度変化があっても、内部の試料温度が変わらないよう、専用の保冷材で包みます。また、打ち上げる時のものすごい振動に耐えられるよう、クッション材で保護します。

  • 宇宙用結晶化容器「JCB-SGT」

    宇宙用結晶化容器「JCB-SGT」

  • 充填作業の様子

    充填作業の様子

Step04.

打ち上げ

いざ国際宇宙ステーションへ

打ち上げの1-2日前に、試料を引き渡し、宇宙船に積み込んでもらいます。無事に打ち上がったら、あとは宇宙飛行士と運用管制員の出番です。

宇宙ステーションでは、タンパク質の到着を、宇宙飛行士たちが楽しみに待っています。打ち上げから到着までは、早ければ半日、遅くとも3日です。宇宙飛行士たちは、実験のために操作マニュアルを何度も読んで勉強していますが、忙しい飛行士のために、実験操作はわかりやすく短時間ですむように工夫しています。

ソユーズロケットの打ち上げ(出典:JAXA/NASA/Bill Ingalls)

ソユーズロケットの打ち上げ(出典:JAXA/NASA/Bill Ingalls)

Step05.

宇宙実験

国際宇宙ステーションへ到着

タンパク質が到着すると、宇宙飛行士が速やかに結晶化を開始します。その後、温度をコントロールできる恒温槽内に保管したら、いよいよ実験スタートです。恒温槽の温度設定や制御は、筑波宇宙センターの運用管制室から行います。

成功のカギはなんといっても「温度」です。実験の間、管制員たちがずっと監視と制御をしてくれているので、とても安心です。装置が不具合を起こした時も、管制員がすぐに対処してくれます。
タンパク質はじっくり1~2か月間、宇宙で結晶生成したあとに、ソユーズ宇宙船やドラゴン補給船で地球に帰ります。

一言コメント

地上管制員は、宇宙にある実験装置のコントロールや、宇宙飛行士の作業の支援をする、とてもカッコイイ仕事です。

タンパク質の入ったコンテナを持つ宇宙飛行士(JAXA/NASA)

タンパク質の入ったコンテナを持つ宇宙飛行士(JAXA/NASA)

  • 実験開始操作を行う宇宙飛行士(JAXA/NASA)

    実験開始操作を行う宇宙飛行士(JAXA/NASA)

  • 筑波宇宙センター運用管制室

    筑波宇宙センター運用管制室

Step06.

構造解析

結晶が地球に戻ったあとは

宇宙から帰ってきたタンパク質結晶は、JAXAに引き渡され、研究者のもとへ返されます。結晶化したタンパク質は、「SPring-8」や「Photon Factory」という放射光施設で回折実験を行った後に、構造解析を行います。その結果が、研究の次のステップへと役立てられるのです。
これまで宇宙にいったタンパク質はのべ1000種類以上!日本中で研究が続いています。

構造解析について詳しくはこちら

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