Technical Information
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JAXA PCG実験で標準採用している結晶化容器です。
PET 製シートでできた細長い筒状の袋で、それぞれ個別に結晶化条件を設定できる3つのセルを備えています。本シートはガス透過性が非常に低く、内容液量の変化は無視できるほど小さく抑えられています。
それぞれのセルに、結晶化溶液とタンパク質溶液を含むキャピラリーを1~2本装填します。溶液類の充填は地上で行いますが、結晶化を軌道上で開始するための別の機構と組み合わせてISSへ運ばれます。
キャピラリの内径は0.5mmが標準ですが、状況に応じて0.3~3mmまでのキャピラリを選択できます。また、脱酸素環境を提供するJCB-SGT DX他、いくつかの結晶化方法をオプションとして用意しています。
* JAXA Crystallization Box - Sealbag Gel Tube
米国便で使用可能な容器です。JCB-SGTと同じPET製シートを使用しています。
充填時には溶液を充填する2つのセルに分けられていますが、宇宙飛行士が指で圧力を加えることにより、2液を分離している膜を破り、軌道上で結晶化を開始します。
通常、片側のセルにはタンパク質溶液を含むキャピラリと安定化バッファーを、もう片側には結晶化容器を充填します。
各セルの液量は設定範囲内において自由に決めることができるため、適用する結晶化方法との組み合わせで、様々な溶液条件を達成できます。
JAXA PCGで採用している標準の結晶化法はカウンターディフュージョン法です。その他、試料の状況や目的に応じて複数の結晶化法を利用できます。
以下では、JAXA PCGで利用可能な結晶化法の代表的なものをいくつかご紹介します。
本法は液-液拡散法の一種です。現在のJAXA PCGでは、アガロースゲルを充填したシリコンチューブ(ゲルチューブ)とタンパク質溶液が充填されたガラスキャピラリを接続したものを基本単位として利用しています。
結晶化溶液はゲルチューブを介してキャピラリー内に拡散する一方、キャピラリ内のタンパク質および他の溶質はゲルチューブを通ってキャピラリ外に拡散します(ただし、溶質の拡散スピードは分子量に依存します)。このような双方向の拡散の結果として、幅広い範囲の結晶化条件を一度に探索することが可能です。
また、CD法は結晶化中にタンパク質が濃縮されないため、蒸気拡散法と比べて結晶成長が穏やかに進行しやすいのが特徴です。実際、蒸気拡散法からCD法へ結晶化法を変更するだけで、結晶品質が向上した例が複数報告されています。
透析法は、透析膜を介して結晶化溶液をタンパク質溶液中に拡散させる方法です。一般に用いられている透析法では、透析ボタンが利用されています。JAXA PCGでは透析ボタンの代わりにキャピラリとゲルチューブの間に透析膜を配したものを用います。結晶化の原理は同じですが、透析ボタンと比べて溶質の拡散経路が長いため、溶質濃度も穏やかに変化すると考えられます。
中性子回折実験用の大型結晶の取得を目的とするような場合など、キャピラリからのタンパク質の漏出を抑えたいときに有効な方法です。
OT法は高透湿性ポリマー膜を利用した結晶化法です。ガラスキャピラリを使う方法と使わない方法がありますが、いずれの方法においても、試料充填部にはタンパク質溶液と結晶化溶液の混合溶液を充填します。試料溶液に含まれる水分子は外液(結晶化溶液)との浸透圧差によりポリマー膜を通して外液側に移動します。よって、OT法は蒸気拡散法と同様の溶質濃度変化が期待できる結晶化法です。
これまでに紹介した結晶化法はいずれも、試料充填部の液量と比べて結晶化溶液が過剰に存在しています(標準液量は試料充填部が数μL、結晶化溶液が1 mL程度)。そのため、十分に拡散時間を経過した後の試料充填部内は、タンパク質濃度を除き結晶化溶液とほぼ同じ組成になっていると考えられます。通常、この構成は大きな問題にはなりませんが、貴重な基質/阻害剤等を使用する場合など、結晶化溶液量をなるべく減らしたい場合には拡散対型が有効です。この方法では、結晶化溶液もキャピラリに充填され、試料充填部とゲルチューブで接続されます。
ゲルチューブ法の充填についてはこちらをご覧ください。
ゲルチューブ法の充填より詳しい説明が必要な方は、こちらをご覧いただくか、以下までお問い合わせください。
JCB-SGT Crystallization Devices Applicable to PCG Experiments and their Crystallization Conditions
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E-mail: Z-crystal@ml.jaxa.jp
JAXA きぼう利用センター JAXA PCG募集担当 宛