HTV-Xが宇宙空間を飛行するために必要となる全ての機能が集約されたモジュールです。また、曝露カーゴおよび技術実証ミッション機器を搭載する機能を担います。
「こうのとり」ではモジュール間をまたいで取り付けられていた太陽電池やスラスタ(小型のロケットエンジン)などをHTV-XではSMに集約することで、将来的にSM単独で宇宙空間を飛行させて他のモジュールとドッキングするような、全く新しい使い方を可能にします。
SMの主なサブシステム(○○系と呼びます)について紹介します。
通信系
宇宙を飛行するHTV-Xを地上から監視・制御するためのデータ通信を行います。
3つ通信経路によって使い分ける2種類のアンテナと、これらのアンテナを使ってデータのやりとりを行う送受信機から構成されています。
〈NASAの追跡・データ中継衛星(TDRS)アンテナ〉は、HTV-XがISSから離れた位置にいるときに用い、HTV-Xよりもはるかに高い静止軌道(高度36000km)にあるTDRS衛星を中継した通信を行います。
また、ISSの近くにいるときにISSと直接通信するために使用する〈近傍通信(PROX)アンテナ〉を備えています。さらにHTV-Xでは、「こうのとり」でも使用していたこのPROXアンテナに、地上局と直接通信する〈地上局アンテナ〉としての機能を追加し、ISS離脱後の技術実証ミッションフェーズで活用します。
統合化制御系
HTV-Xの"頭脳"にあたる部分です。3台のフライトコンピュータ(FC)を中心に、機体の位置・速度・姿勢を把握してコントロールする〈航法誘導制御〉、地上との信号のやりとりを交通整理する〈データ処理〉、HTV-Xに搭載されているすべての機器からの信号を監視する〈システム管理〉の3つの機能を一手に担います。
「こうのとり」では別々の計算機に分かれていたこれらの機能を一元化することで、HTV-X内のデータの流れがよりシンプルに、そしてスムーズになります。
3台のFCは同時に同じ計算を実行、それぞれが正常に動作していることを確認するために計算結果の多数決をとります。また3台体制であれば、万が一2台のFCが故障しても3台目で飛行が継続できるため、高い安全性と信頼性を実現できます。
電源系
太陽電池による発電、二次電池(充電池)への充電、HTV-Xに搭載されている機器への電力の分配を行います。
「こうのとり」では円筒形の機体の側面に分散して貼られていた太陽電池を、HTV-Xではサービスモジュールに取り付けられた羽のようなパドルに集約。さらに、パドルに30°のキャント(傾き)を付けることで、時季に左右されず効率的に発電できるようになりました。これにより、大きな電力を必要とする長期間の技術実証ミッションなどに対応できるようになります。
また、二次電池の容量を増強することで、「こうのとり」で使用されていた一次電池(使い切り電池)を削減し、機体の軽量化を実現します。
推進系
スラスタと呼ばれる小型のロケットエンジンを用いて、統合化制御系からの信号に従いHTV-Xの姿勢や軌道をコントロールします。
「こうのとり」では機体の前後にモジュール間をまたいで取り付けられていたスラスタおよび配管を、HTV-Xではサービスモジュールに集約してシステムをシンプルにしました。これにより、低コスト化を実現するとともに、種子島での機体の組み立て作業を大幅に短縮しカーゴサービスの向上に貢献します。
また、スラスタの配置と噴射の仕方を工夫することで、「こうのとり」で使用されていた4基の大型スラスタ(メインエンジン)を削減し、よりシンプルな推進系を構成します。
さらに、燃料の搭載量も「こうのとり」の1.3倍に。軌道や姿勢を変えるような複雑な技術実証ミッションにも対応できるようになります。
構造系
サービスモジュールの"骨組み"にあたる部分です。
外側の八角形の筒と内部を貫く円筒(セントラルシリンダ)の二重構造となっており、打ち上げ時の曝露カーゴおよび技術実証ミッション機器の荷重を効率的に支えます。このセントラルシリンダの内径は、宇宙飛行士が中を通れるサイズ(内径1m以上)で設計されており、たとえば、将来HTV-Xを宇宙ステーションの一部として活用できるような発展性をもたせています。
また、HTV-Xの特徴ともいうべき八角形の外形は、側面にスラスタや太陽電池などの機器を搭載しやすく、サービスモジュール内部の空間を広くとれるなどの理由で選びました。
(このウェブサイトの中にも八角形が散りばめられています。見つけられましたか?)