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[PART 2] 2013.3.9 SAT. 小・中学生対象

開催結果報告

星出彰彦宇宙飛行士によるミッション報告

星出彰彦宇宙飛行士 ミッション前の訓練の様子から、打上げ、そして帰還までのダイジェスト映像をステージ中央の大きなスクリーンに映し出し、星出宇宙飛行士が映像を見ながら解説しました。映像を通して、長期滞在中に3回実施した船外活動や、小型衛星放出技術実証ミッション、科学実験、宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)などの補給船の発着に関わる宇宙飛行士の作業など、滞在中の多岐にわたる任務や、ISSでの生活の様子も含め、長期滞在ミッション全体の概要を報告しました。

第1部 星出宇宙飛行士ミッション真剣トークショー

星出彰彦宇宙飛行士
長谷川義幸(JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部長・理事)
上垣内茂樹(JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部 宇宙環境利用センター長)
東覚 芳夫(JAXA有人宇宙開発利用ミッション本部 有人宇宙技術センター きぼうフライトディレクタ)
星出彰彦宇宙飛行士
星出彰彦宇宙飛行士
長谷川義幸(JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部長・理事)
長谷川義幸(JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部長・理事)
上垣内茂樹(JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部 宇宙環境利用センター長)
上垣内茂樹(JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部 宇宙環境利用センター長)
東覚 芳夫(JAXA有人宇宙開発利用ミッション本部 有人宇宙技術センター きぼうフライトディレクタ)
東覚 芳夫(JAXA有人宇宙開発利用ミッション本部 有人宇宙技術センター きぼうフライトディレクタ)
第1部 星出宇宙飛行士ミッション真剣トークショー 第1部では、星出宇宙飛行士に加えて、JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部の本部長を務める長谷川義幸理事と、同じく有人宇宙環境利用ミッション本部の上垣内茂樹宇宙環境利用センター長、そして、「きぼう」日本実験棟の管制を指揮する東覚芳夫フライトディレクタの3名を交えた4名で、ミッションのトピックを掘り下げました。
長谷川 星出宇宙飛行士のミッション報告のトピックスをより深め、技術的な内容や、国際的チームワークでうまくやってきた話を掘り出してみたいと思います。前回組み立てた「きぼう」の船内実験室を使ってどう感じたのかを星出さん教えて下さい。
星出 私の前にさまざまな実験・運用をしてきたことで、宇宙飛行士の使い勝手が良いようにできていました。実際に使われている実験室なのだなと強く感じました。
■「こうのとり」で証明した高い日本の技術力
「こうのとり」で証明した高い日本の技術力
長谷川 日本の「こうのとり」がどのくらいすごいのかという話を、小物を持ってきましたので、簡単に説明させていただきます。星出さん、地球をこの辺に(星出さんの右握りこぶしを地球に見立てる)。
星出 はい。これがまさにチームワークですね。
長谷川 宇宙ステーションは地球を1時間半で回っています。それに向かって、こうのとりが種子島宇宙センターから打ち上げられます。こうのとりがものすごいスピードで追いかけていきます。難しいのは、地球を中心にして軌道を描くので、うまく持っていかないとぶつかって、ミサイルになって宇宙ステーションを破壊してしまいます。それを地上部隊が制御し、自動制御もしながら追いかけていきます。同じ軌道になり、ステーションの下300メートル先に行きます。それから徐々に上がっていって、ステーションから10メートルのところまできます。NASAと協議した上で、アームでこうのとりをつかむために、ステーションとこうのとりの相対速度を秒速2センチ以下にするという基準にしました。地上で我々が見ていてもよく分からないのです。実際にはどの程度どういう風に動いていたのでしょうか。
星出 捕まえる寸前に、こうのとりがスラスタ(推進器)を噴かない状態にします。その後もピタッと動かないのです。カメラで見ていますけれども、まったく動かない。これはどこかに固定されているのではないかというくらい、ピタッとしていました。
長谷川 捕捉の難しさというのはなかったのですか。
星出 最悪のケースをいっぱい想定して、ふらふらしているものを一生懸命追いかけて捕まえる訓練をしました。99秒間に、という制約もあります。今の子どもたちはUFOキャッチャーとかで訓練しているのでたいしたことではないかもしれないですが。我々はいろいろなケースを想定し、何百回と訓練をしましたが、成果を見せる必要はなかったですね。本当にピタッと静止していますので、まっすぐ普通にいって捕まえればよい状態でした。
長谷川 それはうれしいですね。全体の開発をしてきた東覚さんから見てどうでしたか。
東覚 ヒューストンと筑波のこうのとりのチームが一体になって支えているという感じですね。すごく一体感があって、緊張感の中にも自信が見てとれました。いろいろな訓練をしてきたこともありますし、飛んでからいろいろ筑波のチームにもメールや電話で「こうのとりはどんな調子?」などと情報共有をしての一体感。それが自信につながったのかなと思い、安心して見ていられました。
■ 小型衛星放出ミッション、その成功を支えた地上のサポート
小型衛星放出ミッション、その成功を支えた地上のサポート 長谷川 星出さんがバネで放出したという10センチ角の衛星はこんなものです。太陽電池を開いたりして、地球観測のセンサーのチェックをしたりとか、天文観測のセンサーの実験や検証をしようということになっています。こうのとりでパッキングして持っていって、開梱して、いろいろ装着していましたよね。そのへんの苦労話とかあれば教えて下さい。
星出 ケーブルの配線ですとか、断熱材をつけるとか、いろいろあります。訓練を受けた時に筑波のチームが模型を作ってくれ、手順書に合わせて、「ここはこれを注意してください」と事細かに教えてくれました。人間ですから忘れます。軌道上での組み立てのときに地上のチームにカメラで見せながら作業しました。あるステップが終わった段階で、「これでいいですか」と。「ここは上ではなくて下に這わせてほしい」とか、そういう細かいところを注意してもらいました。
■ メダカ実験の意義、トラブルへの対応力(判断力、経験、体制)
メダカ実験の意義、トラブルへの対応力(判断力、経験、体制)
長谷川 次はメダカの話をします。
上垣内 宇宙に行くと、宇宙飛行士は骨や筋肉が弱くなります。我々が年を取ってなる老化現象のようなものが、地上の10倍くらいのスピードで起こります。宇宙は、骨や筋肉が弱くなる現象を調べるのに非常に良い環境です。それを今回はメダカを60日間飼育し調べました。
今はサンプルの大部分が軌道上にあるので、地上に下りてきたらそれを研究し解析して、老化対策も含めた対策に役立てます。
長谷川 メダカの実験では、水槽に水を入れるときに空気が入ってしまいました。泡があるとメダカが酸欠になったり、エサがとれなくなったりするそうで、とにかく泡を取らなくてはいけない状態でした。地上部隊と宇宙飛行士とで相談しなさいと言いました。
上垣内 すぐ水槽にメダカを入れるので、早く泡を取らなければいけない。何が使えるかということで、宇宙にある物をいろいろ調べました。これは大きな注射器の先のほう、水槽に水を足すためのものです。これを差し込んで泡を抜けばと考えました。ただ、このままだと泡の中にうまく入らないので、別の器具についていたチューブを注射器に付けました。さらにチューブだけだとグニャグニャなので扱いにくいだろうということで、針金をテープで留めました。これなら泡の中に先端を突っ込んで空気を抜けるのではないかと考えました。5時間くらいで考えて、手順も作成しました。
星出 泡が出たのは、メダカがソユーズに到着する前の日でした。上にある小さな穴から入れて泡のところまで先端を持ってこなければいけない訳です。そのためにこの針金をうまく曲げて、こう入れて、必要なところに持っていって、引いて、泡を取るという作業をしました。このとき必死に「すべての泡を抜かなくてはいけない」と思いました。
長谷川 そう、「全部抜け」と言いました。
星出 一生懸命作業をし、全部泡を抜くことができました。その次の手順には「泡をちょっと入れてください」ということでした。メダカは魚ですからある程度の酸素が必要だということで。地上チームは、我々があまりに一生懸命作業をしているので、「もういいです」と途中で言うのもなんだなあ、と黙って見ていてくれたそうです。
■ 国際宇宙ステーション(ISS)、「きぼう」の存在意義
長谷川 国際宇宙ステーション、「きぼう」の存在意義はどういうところにあるのかとか、どんな運用技術を学んだとか、国際的にどうなのかという質問があったので、東覚さんから答えて下さい。
東覚 宇宙ステーションの運用にかかわってもうすぐ5年になります。今、宇宙飛行士も各国の混成部隊でやっていて、地上の管制チームも管制センターもいろいろな国に散らばっています。各国の都合がありますが、先ほどのようなトラブルがあると「我々が手伝えることはないか」と一体感を持ってやることができます。大規模システムを一体感をもってやっているというのは、宇宙ステーションの一番の意義だと思います。
上垣内 宇宙でいろいろ実験をする担当をしていますが、実験は常に世界初のことをやっています。そうすると思わぬことが起こる。その時に宇宙飛行士がいると柔軟に対応してくれ、そこからまた新しい発見が生まれます。宇宙で新しい科学を発見するために、人間が宇宙に行って研究するのは非常に重要なことだと思います。
星出 宇宙ステーションを運用して、既に1500件の実験をしてきています。昨年1年間だけで300件です。基礎研究が中心ですが、日本の技術は基礎研究の積み重ねでここまで来たと思います。宇宙ステーションは2020年までしっかりやると国際的に合意していますが、その先も、日本の技術力を上げるためにも非常に大事な宇宙の実験室だと思います。重力がない場所の実験室は今、宇宙ステーションしかありません。きちんと日本が有効活用すべきではないかと思います。
長谷川 日本が定時発射・定時到着を確実にやるというのは、アメリカにも、ロシアにもすごく存在感があるそうで、それを続けていくことが日本自体の宇宙レベルを現しています。きぼう、こうのとり、その先の技術を獲得していくと、日本の世界での存在感も増します。宇宙飛行士という、映画でいうヒーローをつくりながら、それを支えるメンバーとの両輪で徐々に成果が出てきています。今後も日本の有人宇宙開発の意義を分かり易くお話ししますし、いろいろなシンポジウムを今日のようにインターネットで中継します。来られない方もぜひインターネット中継で見ていただいて、応援のメッセージをたくさん下さい。ご清聴ありがとうございました。
【第2部】科学と技術が切り開く未来、宇宙の技術から見えること / 閉会挨拶
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