再突入運用の概要
軌道上でのすべてのミッションを終えたHTV-X1号機は、軌道離脱マヌーバを計3回実施し、2026年5月26日 23時09分頃(日本時間(以下同)、推定時刻)、大気圏への再突入※1 を完了し、5月26日 23時09分頃~ 27日 00時09分頃(推定時刻)に着水しました。これにより、HTV-X1号機の運用フェーズは最終段階を完了しました。
HTV-X1のミッションの特徴 〜「こうのとり」との違い〜
物資輸送ミッション
技術実証ミッション
- 小型衛星の放出:軌道変更能力を活用した高い高度での小型衛星放出が可能です。
- 大型展開構造物の運用実験:ISSや宇宙飛行士との干渉がなく、展開時の機体姿勢の維持が可能です。
- ISSから離れた環境での与圧実験:安全要求が緩和されるため、様々な実験が可能です。
- 自動ドッキングの技術検証:軌道姿勢制御能力やISSとの通信機能の活用により実証が可能です。
- 多様な軌道・姿勢等での実験:自在に軌道や姿勢を変更し、センサを地球に指向させる等が可能です。
記者会見の概要
1. ミッション全体の運用結果
HTV-X1号機は2025年10月26日に種子島宇宙センターより打ち上げられ、10月30日にISSに到着。カーゴに搭載した実験用の装置、生鮮食品や水などを送り届ける物資輸送ミッションを完遂しました。その後、約4か月のISS係留期間を経て、2026年3月7日にISSを離脱。約2か月半の技術実証期間に3つのミッションを実施しました。それらを終えた後、2026年5月26日に大気圏への再突入を行い、約7か月間にわたるミッションを完了しました。
伊藤は、この7か月間を「非常に密度の濃い運用」であったと振り返り、そのうえで「十分な結果が得られ、非常に満足のいく開発運用結果」となったと述べました。
2. ランデブ・係留・再突入運用結果
打上げ後は、ISS接近に向けて必要な機能確認を実施しながら、4日間のランデブ運用により、徐々に高度を上げてISSに接近。把持運用では、NASAのISS運用管制室、JAXAのHTV-X管制室、そしてISSに滞在する油井宇宙飛行士が連携して運用を実施しました。状況確認は、NASA側のCAPCOM(地上管制官)を務めた星出彰彦宇宙飛行士を通じて行われ、各管制室とISSが緊密に連絡を取り合いながら運用が進められました。そして2025年10月30日、油井宇宙飛行士が操作するロボットアームによりHTV-X1号機の把持に成功しました。各管制室では、関係者がその瞬間を見守り、成功をともに喜びました。
再突入に際しては、技術実証ミッションを実施していた高度約380kmから、3回の大きな軌道離脱マヌーバ(エンジン噴射)を行い、徐々に高度を降下させました。その後、2026年5月26日23時09分頃に高度120km地点に到達(大気圏突入)。27日00時09分頃までに南太平洋の着水予定区域へ計画通りに着水しました。
中野は予定通り安全に着水できたことは大きな安心と喜びの瞬間だったと語りました。
3. 技術実証ミッションの成果
超小型衛星放出ミッションH-SSOD
軌道上姿勢運動推定実験Mt.FUJI
展開型軽量平面アンテナ軌道上実証/次世代宇宙用太陽電池軌道上実証DELIGHT/SDX
4. 今後の展望
また、3号機の自動ドッキング実証に向けた準備として、 2号機ではISSを一度離脱した後に再びISSに接近し、自動ドッキングの飛行デモンストレーションを行う計画が検討されていることを報告しました。
質疑応答(一部抜粋)
―HTV-X1の打上げから再突入までの運用を終えての感想をお聞かせください。
伊藤:10月26日の打上げから5月26日の再突入までの7か月間、非常に密度の濃い、非常に長い期間に感じました。そして、それに見合う十分な結果が得られたと考えており、非常に満足のいく開発運用結果が得られたと思っています。
中野:今回は飛行の期間が7か月ととても長かったので、チーム内でもずっと緊迫した状態が続いていました。一方、技術実証ミッションでは大きな成果をたくさん得られ、無事に再突入できて喜びと達成感でいっぱいです。あとは、今までずっと飛んでいたHTV-X1がもういないのかと思うと、少し寂しいような、心にぽっかり穴が開いているような複雑な気持ちです。
末廣:無事終わってよかったという、ほっとした気持ちです。技術実証ミッション担当としては、ミッションにかかわる方々と喜びを共有でき、非常に楽しい瞬間が多い2.5か月だったと思います。例えば、超小型衛星放出では、衛星開発をした日本大学の学生さんや、放出の支援をしてくださるSpace BDさんと一緒に喜びを共有できました。非常に濃くて、いい期間だったと感じています。
―長いミッション期間でしたが、その中でのハイライトをそれぞれ教えてください。
末廣:結果的には成功しましたが、Mt.FUJIミッションでは難しい場面もありました。レーザーの特性として天気や昼夜といった条件に左右されるところがあるのですが、運悪く天気が悪く、データがとれない時期がありました。計画を柔軟に変更し、他の機器のチェックアウトを前倒しにするなどの調整をしながら、粘り強く観測・測距を続け、ついに初めて姿勢変更の瞬間をとらえたときは関係者一同盛り上がりました。
中野:HTV-Xの1号機ということで、往路は初号機ならではの様々なチェックアウトを経てISSに近づいて行きました。ISSから1kmくらいの距離になり、ISS側のカメラでHTV-X1が見えた瞬間、そしてそこからスラスタを吹きながらISSに近づいてくる瞬間は感動しました。ランデヴ飛行ならではの、相手がいて相手のカメラがあるからこその映像だったので、管制室の全員が盛り上がりました。
伊藤:技術実証の最初のミッションとして、超小型衛星を3月11日に放出しましたが、そこから数時間後に日本大学の学生から、日本大学の船橋の受信アンテナで受信できたというメールを受けたときがハイライトのひとつです。やっと宇宙に届けることができたと安心しました。
―HTV-Xの今後の拡張性についてお聞かせいただけますか。
伊藤:HTV-X本体については2、3号機と続いていきますが、大きな改良点などはありません。搭載される実験機器は号機によって変わります。また、1号機では油井宇宙飛行士のロボットアームでの把持による結合を行いましたが、世界的な趨勢として、人を介さない自動結合による運用が必要になってくると考えています。3号機ではその技術の獲得も目指します。そこでHTV-Xとしては新たな発展形へ成長すると考えています。
―HTV-Xのミニステーションとしての活用という話も聞きますが、その観点での展望をお聞かせください。
伊藤:HTV-Xの大きな特徴として、サービスモジュールと与圧モジュールが分かれている点が挙げられます。これらのモジュールは別々に使うことができます。サービスモジュールは、それだけで飛行機能を使って、他の機器やモジュールをつけることができます、与圧モジュールは、独立してミニステーションの一部になるなどが可能です。開発は、そういった拡張を想定して進めてきました。HTV-Xがどのように使われていくかは具体的には分かりませんが、こういったHTV-Xの開発成果が将来的に使われるようになれば非常にうれしいことだと思います。
HTV-X1号機ミッションを終えて
今回の再突入完了により、HTV-X1号機ミッションは一区切りを迎えます。今後、取得された運用データや技術実証成果の分析が進められ、次号機以降の運用や将来の宇宙輸送システム開発へ活用されていく見込みです。
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