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2026.03.26
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Kibo-ABCイニシアチブ参加国・地域の活動報告:オーストラリア

  • 「きぼう」利用のご案内
  • きぼうアジア利用推進室(KUOA)
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写真: (右から)One Giant Leap Australia(OGLA)のジェナ・マッカーシー氏(国際教育アウトリーチマネージャー)と、ジャッキー・カーペンター 氏(最高責任者)

Kibo-ABC加盟国であるオーストラリアでは、オーストラリア宇宙庁から委託を受けたOne Giant Leap Australia(OGLA)が、2008年から宇宙分野でのSTEM教育に力を入れ、各種プログラムを実施しています。
2月にOGLAの皆さんが筑波宇宙センターに訪れた際に企画をお伝えし、後日メールでお話を伺いました。

まず「きぼう」を利用したアジア・太平洋協力(Asian Beneficial Collaboration through “Kibo” Utilization: Kibo-ABC)イニシアチブについて簡単に紹介します。Kibo-ABCは、アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)の宇宙フロンティア分科会(SFWG)の前身である宇宙環境利用分科会(SEUWG)が設置し、アジア・太平洋地域における「きぼう」利用の推進と、その価値の共有を目的としています。Kibo-ABCのプログラムには、アジアントライゼロG(ATZ-G)、「きぼう」ロボットプログラミング競技会(Kibo-RPC)、アジアの種子(SSAF)、そしてきぼう利用ワークショップ等があります。

この活動紹介シリーズでは、各国・地域のKibo-ABCメンバーの取り組みについて紹介します。今回はオーストラリアでKibo-ABCプログラムを進めているOGLAに焦点を当て、5つの質問にご回答いただきました。

One Giant Leap Australia(OGLA)ロゴ

OGLAに聞いてみました(5つの質問)

1. 「アジアントライゼロG(ATZ-G)」について、参加学生たちが得たスキルと主な教育的成果はどのようなものでしたか?

ATZ-Gは、学生が好奇心を持って、国際宇宙ステーション(ISS)の微小重力環境下で観察できる様々な実験アイデアを考えることができる、開かれたプログラムです。学生たちは普段このようなことを考える機会がないので、このプログラムに参加できることは特別です。

このプログラムでは学生が宇宙実験を提案できるため、主な教育的成果は科学的な知識と思考力が得られることです。学生は、実験の内容と、ISSでどのように実施するかを考える必要があります。結果はどのように観察されるのか?安全に実施できるのか?これらの疑問から一旦自分の答えをつかむと、仮説、方法、そして提案の要点を書き始めることができます。教師や学校と連携し、学校では、学生は時にはテンプレートを使用したり、クラス全体や学年全体で参加する実験を計画したりしています。
アジアントライゼロ G 2025のロゴ

成果に関し、学生はコミュニケーション能力とプレゼンテーション能力を身につけることができます。提案書では適切な語彙を用いて実験内容を説明し、読みやすい形式で構成し、期待される結果を具体的に説明する必要があります。地球上で実施する実験であれば、いくつかの要素は非常に簡単に説明できます。しかし、微小重力環境下で器具がどのように動くかを考えるのは、はるかに難しい課題です。

2. 「「きぼう」ロボットプログラミング競技会(Kibo-RPC)」について、参加する意義は何でしょうか?また、参加学生や学校にとってどのようなメリットがありますか?

Kibo-RPCに参加することで、学生はISSに搭載されたドローンロボットをプログラミングして動かすという貴重な機会を得られます。従来のロボットプログラミングコンテストとは異なり、Kibo-RPCではシミュレーション上と実際の宇宙空間の両方を体験することができます。シナリオは毎回変わりますが、このプログラムを通して、学生はISSにいるドローンロボットをプログラミングする機会を得ることができます。

オーストラリア国内予選で1位になったチームは、自国を代表して他の国や地域のチームと競い合います。参加する学生や学校にとって、グローバルな舞台で活躍する絶好の機会となります。JAXA筑波宇宙センターで開催される対面イベントでは、学生同士が直接交流し、成し遂げたことを称えあうこともできます。

このイベントへの参加は、宇宙、ロボットプログラミング、そしてプログラミング教育に関心のある学生や学校にとって非常に意義深いものです。参加した学生は、将来、人工衛星、ドローン、その他の先端技術等のプログラミングに関わるキャリアを目指すかもしれません。

第6回Kibo-RPCロゴ
第6回Kibo-RPC オーストラリア代表チーム Dream Rover (Image by Sydney Robotics Academy)

3. Kibo-ABCの国際協力の活動の1つが「アジアの種子(SSAF)」や「Asian Herb in Space(AHiS)」になりますが、オーストラリアは過去、これらの活動に貢献してきました。SSAFは将来の宇宙探査にむけてどのような貢献が期待されますか?

宇宙に関するあらゆる実験は予測が難しいものですが、宇宙空間における種子の発芽と植物の生育の未来については明るい展望があります。現在の研究では、目に見える植物の存在が人間の健康増進につながるだけでなく、栄養価や薬効も期待できることが示されています。研究と実験が進めば進むほど、宇宙探査のための効率的な植物栽培を実現するためのデータをより多く分析できるようになります。

AHiS/SSAFのロゴ
宇宙空間での苗や植物の生育を活用することは、宇宙探査の未来における多くの課題を解決する可能性を秘めています。宇宙空間で食料を栽培できれば、燃料消費量の削減、ペイロードのコスト削減、そして他の宇宙関連ミッションへの資金提供機会の増加につながります。

4. 過去何年にも渡り、たくさんのオーストラリアの学生がこれらのプログラムに参加してくれました。Kibo-ABCのプログラムの参加者で、宇宙関連分野でのキャリアや進学を選んだ人はいますか?

オーストラリア国立大学在籍の西本慎吾さんは、ATZ-Gプログラムの一環として、2024年にISSで実験を行う機会を得ました。その翌年の2025年にシドニーで開催された国際宇宙会議(IAC 2025)で、ATZ-Gとは別の自身の研究に関する要旨を発表する機会も得ました。現在は航空宇宙工学の博士号取得を目指して研究に励んでおり、2027年5月に学位を取得する予定です。
また、同様にATZ-Gプログラムに参加しているクエーカーズ・ヒル高等学校のヘイリー・ユーセフさんとDanebank Anglicanデインバンク・アングリカン女子高等学校のカイラ・イライアスさんは、いずれも優秀な高校1年生(10年生)で、STEM分野、特に航空宇宙分野でのキャリアを目指しています。
アジアントライゼロGに参加したオーストラリアの学生
左から 西本慎吾(オーストラリア国立大学)氏、 ヘイリー・ユーセフ氏(クエーカーズ・ヒル高等学校)とカイラ・イライアス氏(デインバンク・アングリカン女子高等学校))(Image by OGLA)

5. Kibo-ABCのプログラムは、学生が宇宙について学び経験する機会を提供だけでなく、地域や学校へどのような価値をもたらしますか?

好奇心と想像力は重要です。人類の宇宙に対する理解は日々深まっていますが、それでもなお、宇宙は計り知れないほどの未知に満ちています。未解決の疑問は尽きることがありません。
一方、学生たちは自らの可能性を過小評価しがちです。彼らの考え方、意見、そして理解は、想像力を形作り、ひいては好奇心を育みます。彼らがどのように宇宙を見ているかは私たちと異なっており、Kibo-ABCプログラムが提供する機会を通して、学生たちは自らのアイデアを共有し、宇宙実験を提案したり、ロボットをプログラミングしたり、科学者が思いもよらなかった方法で植物について学んだりすることができます。学生の好奇心と想像力は、私たちの宇宙の見方を変え、地域社会を含めた未来への新たな展望へと導く可能性を秘めています。
ご協力いただいた OGLA の皆さまに感謝いたします。

参考

  • アジアントライゼロG(ATZ-G):ISSの「きぼう」で、アジア・太平洋地域の学生が提案した簡易物理実験を実施する教育プログラムです。選ばれた実験は、日本人宇宙飛行士により「きぼう」で実施されます。(2011年~現在)
  • 「きぼう」ロボットプログラミング競技会(Kibo-RPC):ISSの「きぼう」内にいる船内ドローンロボット(NASAのAstrobee、JAXAのInt-Ball2)をプログラミングし、与えられた課題に挑む教育プログラムです。ミッションは毎回異なり、学生はプログラミングを通じて、科学技術・工学・数学のスキルを磨くことができます。世界の参加者と国を超えた交流を行うことで、国際的な視野を育てる機会にもなります。(2020年~現在)
  • アジアの種子(SSAF):Kibo-ABCプログラムのひとつで、アジア・太平洋地域の若手研究者や青少年に宇宙実験や宇宙環境利用を学ぶ機会を提供します。身近で扱いやすい植物を用いたシンプルな内容のため初心者でも参加しやすく、宇宙と地上の両方で植物実験の実践的な経験を得られます。(2010年~現在)

※特に断りのない限り、画像クレジットは©JAXA