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[PART 1] 2013.2.21. THU. 高校生以上対象

開催結果報告

<出演者>
JAXA宇宙飛行士 星出 彰彦(第32/33次長期滞在フライトエンジニア)
三宅 宏実(ロンドンオリンピック ウエイトリフティング女子48kg級 銀メダル)
司会 篠原ともえ

星出宇宙飛行士によるミッションダイジェストビデオ

星出宇宙飛行士によるミッションダイジェストビデオ 2012年7月の打ち上げから11月の帰還まで、国際宇宙ステーションでの活動を中心に映像を見ながら振り返りました。国際宇宙ステーション到着直後に、色んな荷物を積んだ日本の宇宙船「こうのとり」がやってきたこと、3回の船外活動を実施して装置の交換や修理作業をした映像が上映されました。その他、手の平サイズの小型衛星を国際宇宙ステーションから放出したこと、メダカが宇宙に2ヶ月滞在すると骨や筋肉はどうなるのかを調べるメダカの長期飼育実験、様々な宇宙飛行士の仕事について紹介しました。また、宇宙では骨や筋肉が弱くなってしまうので運動をしなくてはならないこと、お風呂に入れないので体をタオルで拭いて清潔にするなど、宇宙での生活について説明し、子供たちも熱心に聞いていました。

会場参加型イベント 「宇宙ってこんなところ」

会場参加型イベント 「宇宙ってこんなところ」 宇宙ふしぎ実験の地球版ということで、会場の参加者全員で宇宙と地球の違いを知ろうという実験を行いました。まず、地上の会場で体験し、その後に宇宙で同じことをした時にどうなるかを星出飛行士の映像で確認しました。
・実験その1:深呼吸
地上での深呼吸は普通にできました。重力があるので手を上げる時は少し力が必要ですが、下ろす時は力を抜けば楽に下がります。ところが、宇宙では逆になります。手を上げるのは簡単ですが、下ろす時には少し力が必要になります。
・実験その2:スクワット(ひざの屈伸運動)
地上でスクワットをすると、ひざを曲げる時と伸ばす(元に戻る)時に筋肉を使います。ただ、重力があるので、ひざを曲げる方が楽です。宇宙でスクワットをする時は、伸びる時の方が楽にできます。曲げる時には足に力を入れて体をひきつけないとできません。宇宙と地上では使う筋肉も違うので、筋肉痛になる部分も違います。
・あやとり
星出宇宙飛行士と篠原ともえさんに教わって、今回は「ほうき」を作りました。少し苦戦していましたが、子供たちも何とか作れました。宇宙であやとりをすると・・・ひもがたるんでいるとふわふわと浮いてしまうのでなかなか難しいですが、ピンとひもを引っ張った状態であればできることが映像からわかりました。

三宅選手を迎えてのトークライブ

三宅選手を迎えてのトークライブ ロンドンオリンピックで大活躍されたウェイトリフティング重量挙げ女子48Kg級銀メダリストの三宅宏実選手をお迎えして、トークライブを行いました。司会の篠原さんを交えて、なごやかなトークが繰り広げられました。
星出宇宙飛行士と三宅選手が会うのは初めてですが、実はオリンピック選手が胸につけているポケットチーフを星出宇宙飛行士が宇宙ステーションに持っていったという、小さなつながりがありました。星出宇宙飛行士が宇宙ステーション長期滞在しているときにロンドンオリンピックが開催されていたので、何か応援できないか、ということでポケットチーフを持って行ったということです。
宇宙飛行士とオリンピック選手というと、夢を叶えてみんなに夢を見せてくれるという共通点があります。宇宙飛行士になる、オリンピックの銀メダリストになる、お二人の道のりをお話ししてもらいました。
星出宇宙飛行士:宇宙飛行士になるためには試験があります。試験は3回目のチャレンジで合格しました。2回は壁にぶちあたってダメでした。三宅選手にも色々と大変な苦労があったり、壁にぶつかったりもしたと思うんですが。
三宅選手:そうですね、たくさんあったんですけど、今回のオリンピックで夢って諦めなければかなうんだということを教えられました。12年かかってたった一つのメダルですが、重みを感じる12年でした。子供のころを振り返ってみると飽き性だったな、と思います。初めて長く続けられたのがウェイトリフティングでした。テニスをやってみたりピアノの先生になりたいとか夢はあったんですけど、それは本当の夢じゃなかったんだと思います。ウェイトリフティングは自分がやりたい、最後まで夢があってメダルを取りたいという自分の目標があったんです。だから途中で逃げ出さなかった、責任感が持てたんだと思います。
篠原さん:重量挙げは習い事とかでたくさんの友達がやってることではないですよね。自分だけが叶える夢ということで、心が折れなかった理由は何だと思いますか?
三宅選手:応援してくれる人たちがいるっていうことですね。頑張ってねと言われると頑張れるんです。オリンピックを前にけがをした時も、何度も心が折れそうになりましたが、オリンピックでメダルを取るということのイメージと、応援してくれる人たちをイメージすると練習を頑張れました。そこが力の源だったと思います。
篠原さん:今日会場に来てくれているのは小学生が多いですが、その頃はどうでしたか?
三宅選手:私の場合は中学校3年生の時に転機が訪れました。それまでは夢が欲しいな、と思っていました。
星出宇宙飛行士:僕の場合は小学校低学年くらいに見た宇宙戦艦ヤマトとか銀河鉄道999に影響を受けました。単純に行ってみたいな、格好いいな、という憧れですね。高校生の頃に日本人宇宙飛行士が選ばれたことで、こういう職業があるんだと思い、その道を考え始めました。
■ 地球と宇宙での重さの違いについても話題になりました。
三宅選手:ロンドンオリンピックのスナッチで挙げたのは87Kgです。
篠原さん:87Kg挙げたんですか?笑顔で挙げてますけど?
三宅選手:挙げた時は肩にはまっているので、重いんだけど嬉しかったです。
篠原さん:ジャークでは110Kgのバーベルを挙げると聞いたんですが、宇宙だったらどうですか?
星出宇宙飛行士:地上では絶対に無理です!でも、宇宙でだったら挙げてますね。船外活動で交換した電気の箱なんですけど、あれが100Kgです。
篠原さん:軽そうに見えますね。
星出宇宙飛行士:動かし始めるのは片手でも出来るんです。でも、重さがあるので、動き始めたものを止めるのが実は大変なんです。
篠原さん:コツがあるんですね。
星出宇宙飛行士:ゆっくり動かさないと危ないんです。動かし始めるところから最後までゆっくり動かすとコントロールが効くんです。
篠原さん:筋肉の使い方としては三宅選手は一気にエネルギーを使うという感じですが。
三宅選手:普段重力に反して物を持ち上げているので、宇宙のパワーを借りればもっと軽く持ち上げられるのではないかと思っちゃいました(笑)。
星出宇宙飛行士:宇宙で重量挙げをやったら、みんなが金メダルを取れちゃいますね。
■ プレッシャーも大きいと思いますが、どうやってリラックスしてるのかも気になるところです。
篠原さん:普段とは違う状況におかれたとき、どうやってリラックスしてるんですか?
星出宇宙飛行士:実は僕、緊張しやすいんです。こういう場所でお話しするのも、難しいことをするのも緊張するんですが、訓練を何度もすることによって、自然にできるようになるんです。打ち上げの時も本当だったら心臓バクバクで、話せないんじゃないかと思うくらいなのに大丈夫だったのは、打上げのときの状態を何度も訓練しているから。周りに一緒にいる宇宙飛行士は1~2年も一緒に訓練してきた家族のような仲間で、打ち上げの直前まで雑談をしたりしていたのがリラックスできた理由だと思います。
三宅選手:普段の練習の中で試合を想定しながら練習をして、練習で自信がついてくれば試合の時でもどんな時でも自信を持って試合ができるので、普段の練習から試合がどうなるか想定して自信をつけます。
篠原さん:緊張したり神経質になったりしないように準備をするんですね。
星出宇宙飛行士:試合直前にいつも必ずすることはありますか?
三宅選手:試合前は大抵、神社に行って参拝します。試合前も変わらず、いつも通りのことをします。普段の流れを変えないように、試合前だからといって変わらないように。
星出宇宙飛行士:似てますね。訓練で何度もやっていることを当たり前のようにできてるときは大丈夫なんです。何かがちょっとずれる、順序が何かおかしいってなると嫌なんです。気になりますよね。
三宅選手:ちょっとしたことで崩れてしまうんですよね。そういうときこそ失敗しかねないので、何かがおかしいって自分の中で感じた時は気を付けるようにしています。
篠原さん:魔法の言葉はありますか?「宇宙」とか(笑)?
星出宇宙飛行士:ないですけど、やっぱり気を付けますね。そういう時こそ失敗しかねないので、何かがおかしいと自分の中で感じた時は気を付けます。
■ 宇宙でのハプニングにはどう対処するんですか?
篠原さん:三宅さんから星出さんに聞いてみたいことはありますか?
三宅選手:思い通りにいかないことはたくさんあって、ハプニングを想定してやってると思いますが、実際にハプニングに遭遇したことはありますか?
星出宇宙飛行士:トラブルはたくさんありました。トイレが壊れたこととか。ISSには2つトイレがあるんですけど、その内の1つが壊れたんです。1回だけじゃなくて何度も。大事なものなので直したい。壊れてすぐの時にはもう1つのトイレを貸してもらうけど、やっぱり直したい。そういう訓練もちゃんと受けてるんです。マニュアルもあります。電話しても直しに来てもらえないので、自分たちで直します。いろんな場面でいろんなトラブルはあるので、なんでも対応できるようにしておかなければならないんですが、自分たちだけでは出来ないんですね。地上の管制官や訓練をしてくれるインストラクターやスタッフのおかげなんです。宇宙ステーションには6人の宇宙飛行士がいますが、その6人だけで何でも出来るわけではないんです。皆がいてはじめて出来るんです。
■ 最後に三宅選手からメッセージを頂きました。
三宅選手:皆さんきっとたくさん夢を持っていると思いますが、夢はたくさん持って、たくさん挑戦してほしいなと願っています。出来ないことは当たり前なので、失敗を恐れずに色んなことに挑戦してほしいです。今というこの時間は二度と帰ってこないので、一瞬一瞬を楽しみながら笑顔で頑張ってほしいです。

星出宇宙飛行士と参加者とのQ&A

Q. : 地球は青かったですか?
星出宇宙飛行士 : 地球は黒かったです。嘘です、青かったです。青かったんですけど青だけじゃないんです。赤い砂漠、海は青いけど森は緑で、夜は暗くて、でも街の明かりはすごく明るい。太陽が沈んだり出てきたりする瞬間は、青いだけじゃなくてその線が白くなったり赤くなったり少しずつ青くなったり、ものすごくきれいな色でした。地球は青いけど色んな色を持っているんです。
Q. : 船外活動をした時はどんな気分でしたか?
星出宇宙飛行士 : 1回目の船外活動は僕自身初めての船外活動だったので、緊張するかなと思いつつ、でも淡々と一緒に行ってたサニー・ウィリアムズ宇宙飛行士と仕事をしました。船外活動するにあたって先輩宇宙飛行士からのアドバイスがありました。エアロックは地球の方を向いていて、エアロックを開けると地球が見えるんです。国際宇宙ステーションの外に出る瞬間、地球がものすごいスピードで回っていて、落ちる!と思って手すりをぎゅっと握る人がいるけど、そうなっても慌てないでね、と。自分もそうなるのかとドキドキしてたら真っ暗で何も見えませんでした。あぁ、なんだ夜か、とちょっと拍子抜けしました。船外活動している間に一回ロボットアームの先端に乗って国際宇宙ステーションよりも前に出た数分間があったんです。周りを見回しても自分の前に何もない。国際宇宙ステーションが全く見えない(自分の後ろにある)、自分が見えているのは地球と宇宙だけ。感動して息をのむ光景でした。
Q. : 宇宙でオーロラは見えましたか?
星出宇宙飛行士 : 見ました。すごかったです。オーロラがよく見える時期があって、ちょうど僕たちがいた時に2回くらいその時期があったんです。その時にはその上空を通るたびにみんなで窓にへばりついて、外を見てました。オーロラ自体は地上で見るのと同じなんですよ。僕らが見たのは緑色のオーロラで、カーテンみたいに見えて。それがものすごく広範囲で見えます。窓の外からずーっと見てても本当に飽きない。見てるうちに夜が明けるほどの感動がありました。
Q. : 船外活動をしている時にスピードは感じましたか?
星出宇宙飛行士 : すごい質問ですね。国際宇宙ステーションは90分で地球の周りを1周するので、ものすごいスピードで飛んでます。船外活動をしている時は国際宇宙ステーションをつかんでいるので目の前にあるのは国際宇宙ステーションなんだけど、、ちょっと離れてみると地球が見えたりして。地球が回転しているのを見るとスピードは感じますが、振り落とされる!というほどのスピードではなかったです。すごいスピードで回ってるんだなというのは地球を見て初めて感じました。
Q. : 宇宙で台風とか見えましたか?
星出宇宙飛行士 : 見えました。台風の目とかも見えるんですけど、大きなハリケーンがアメリカの方であって、その時は大きすぎてただ白い雲がぶわー。まだ渦を巻いてなかったからただの真っ白な分厚い雲という感じでした。台風も見えるし大きな嵐も宇宙からちゃんと見えます。
Q. : 宇宙に連れていったメダカはどうしたんですか?
星出宇宙飛行士 : メダカはいっぱい連れて行きました。実験に使うものなので何匹かは一緒に帰ってきて研究者のところに行きました。宇宙にいた3週間くらいの間に筋肉とか骨とかどうなったのかなというのを調べています。それよりも長くいたメダカさんはまだ宇宙にいて、今度帰ってきます。帰ってきたら研究者の人が3週間宇宙にいたメダカと、2ヶ月宇宙にいたメダカと、宇宙に行ってないメダカとどういう違いがあるのかなというのを調べます。
※長くいたメダカも、平成25年3月に戻ってきました。
Q. : 宇宙から見た月はどんな感じですか?
星出宇宙飛行士 : ものすごく明るかったです。大気がない分、特に満月の時は太陽が出ているかのようでした。地上でも満月の時は月明かりで薄明るくなるのと同じですが、宇宙ではものすごくまぶしくて、地上を見たいのに明るすぎると思うくらいでした。
Q. : 宇宙では鉄棒が出来るんですか?
星出宇宙飛行士 : 鉄棒がないので分からないけど、やりやすいところとやりにくいところがあるかな。勢いつけて回り始めればきっと止まらなくなるかな。ぷかぷか浮いて普通に飛んだりは出来ます。飛んでいって手すりを掴んで止まると、くるっと回るのは出来た。宇宙で鉄棒は面白いかもしれないですね。新しい技を開発するとか。宇宙オリンピックでやってみると面白いかもしれない。ぜひ宇宙でオリンピックをやってください。
Q. : ロケットに乗った時に圧力はどのくらい感じましたか?
星出宇宙飛行士 : 行きはちょっと押さえつけられてる感じで、体の上に自分が3人くらい乗ってる感じ。重いよね。重いな~と感じました。帰ってくる時は4人乗ってた感じかな。4.4Gまでかかったので、自分の体が4倍の重さになったような感じ。帰ってくる時は、無重力の状態にずっといたので体が押さえつけられることに慣れてないんだよね。でも宇宙船内にある良い椅子に座ってたので背中が痛くなることはなく、無事に帰ってきました。その時に船長の飛行士が地上とずっと交信してなければいけないんだけど、大気圏突入でだんだん加速度がかかってきて、体が押さえられてくるのでしゃべるのも大変。今1Gです、今2Gです、イマサンジーデス、ヨンジーデスみたいな感じで(笑)。ジェットコースターと感じは似ているけどジェットコースターほど短くないので、長い時間押さえつけられているんです。それが大変といえば大変だけど、お腹に力をぐっと入れておけば大丈夫でした。
Q. : ソユーズで帰ってくる時に到着する位置を考えて操縦するのに、加速度がかかって、でも乗っている人たちのGを少なくしないといけなくて、大変だと聞いたことがあるけど、実際どうですか?
星出宇宙飛行士 : 今回の場合は陸に降りてくるんですけど、だいたいここで逆噴射をするとだいたいこのエリアに降りるというのを計算してるんです。逆にいうとここに着陸してほしいからここでロケットを噴射してほしいと全部計画していて、計画通りにやります。風の影響があったり色んな影響があるのでどんぴしゃにはいかないです。少しずれたりします。そこを調整するために加速度が少しかかったりします。スペースシャトルでも同じように、大気圏に帰ってきてスピードを落としてくるとそういう力がかかってきてしまうので、出来るだけ楽になった方がいいんだけどそれは避けられない。大きくなったら研究してみんなに優しい乗り物を作って下さい。

星出宇宙飛行士からメッセージ

さっき三宅選手も仰っていましたが、宇宙に行くという夢の実現に向けて色んな苦難があります。宇宙飛行士になることも大変だし、宇宙飛行士になってからの訓練でもいっぱい失敗しました。でもそれを乗り越えてきたからこそしっかりといい仕事が出来たと思うので、みなさんも夢の実現に向けてどんどんチャレンジして、いっぱい失敗して、それで強くなってほしいと思います。そして多くの人に支えられて、そういう支えてくれる周りの人たちに対する感謝を忘れないでほしいと思います。今日は本当にありがとうございました。
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